保険を卒業する危機管理

保険加入の罠・保険の見直しの罠

「保険だけ」で準備しないこと

社会人になったら保険は加入するもの…結婚を機に、住宅購入の際に、役員には大きな責任があるのだから、会社に借財があるから保険を…。

TV・雑誌・新聞・Web…など、毎日のように「保険」という言葉を見聞きします。

 

遺族のために…老後の備えに…病気やケガの備えに…通通勤通学の備えに…など、見えない不安を払しょくするためにありとあらゆる保険に加入する。

 

生活者が理解できないくらい保険の種類が多く、保険のCMが多く、保険を勧められる機会が多く、当たり前のように保険に加入していることを、皆さんは疑問に思ったことはないのでしょうか?

 

すべてのリスクマネジメント(危機管理)を保険で賄おうとする世の中ですから、当然、どの家計も企業も保険を掛けすぎてしまうのです。

保障・補償・保証をすることは「目的」、保険を掛けることは「手段」

例えば、仮に毎月口座に300万円振り込まれ、その権利は家族のだれでも引き継げるとしたら、死亡保障は必要でしょうか?

入院の保険は必要でしょうか?老後の生活費の不安はあるでしょうか?

 

誰もが毎月300万円の不労所得を持ち合わせていないため、その準備を保険で補おうとするのです。

 

保障とは生活などの保護を重点的に行い、補償とは償いを重視し、保証とは責任を果たすことを言います。

 

それらをまずは

①社会保障(公助)で準備、

②勤め先の共助である企業保障で準備、

③貯蓄・運用・ローンなど保険以外で対応可能なものを優先し、

④最後に保険で準備することで、保険のムダが省けるのです。

 

保険には、時間とお金を手に入れる反面「使い道に制限」があります。

言い換えると、即効性と大金の準備はできますが支払われないケースがあるということです。

そのため、「使い道に制限のない貯蓄や運用」などで準備した後に、足らずを保険の活用で補うことが理想なのです。

 

 

保険以外で準備できるものが先決。

 

社会保障と企業保障を絶対確認すること。

「過去に加入した保険との比較」は間違い

当たり前のような習慣が、家計や企業のムダな保険の加入を増幅させています。

 

例えば、「無料で証券を拝見いたします」「現在ご加入の保険と比べると…」というフレーズも、当然のように耳にしますが、拝見される証券は、過去のある時点に皆さまが加入したものですから、今現時点の必要な保障と同一とは限りません。

 

また、そもそもその保険に加入する時点で、①どのような基準で加入し、②どれくらいの水準が妥当だと判断されたのでしょうか?

 

今後は、「払えるから」、「勧められたから」、「お付き合いで」という選択基準でない適正な基準と水準を皆さまが身に付けることで、ムダな保険とは決別することができます。

適正な生命保険の「基準と水準」

遺族に必要な保障額とその準備を例にとって、生命保険の死亡保障を検証してみましょう。

 

①残された遺族に必要な支出の書き出し。

毎月の生活費、教育費、車などの耐久財の購入資金、住宅の費用、レジャー資金、配偶者の老後資金やお墓代・葬儀費用など。様々な支出項目を書き出してみます。

 

②月々の費用で必要なもの、一度きり、ある期間限定の費用に分ける。

毎月の生活費や賃貸住宅費用などは毎月いくらという考え方ができますが、お墓代や葬儀費用は一度きり、教育費や耐久財購入資金などは特定の期間の費用になります。

 

③遺族に入ってくるお金を公的保障・企業保障・自分で準備の順に書き出し。

遺族年金は日本年金機構のサイトにそのしくみと計算方法が掲載されていますので、年金定期便(誕生月に郵送される)と併用すると容易に計算が可能です。

 

誰もが面倒くさがるのが、お勤め先の福利厚生である企業保障です。死亡退職金をはじめ、弔慰金や見舞金など、「自分の生活設計をするので知りたい」と思っても日常業務が優先されるため、切り出しにくいと思われている方が大半です。また、企業側が、わかりやすく提示しているケースも稀なことが悲しい現実です。

 

④保険以外の収入や財産の確認。

不労所得(利子・配当・不動産など)・残された遺族の勤労所得・取り崩し可能な財産の確認。

 

⑤不足を保険で準備。

ここが最も大切ですが、死亡保障には定期保険・終身保険・家族収入保険(分割支払いタイプ)・逓減定期保険(徐々に保障額が減少する)・逓増定期保険(徐々に保障額が増加する)など様々なタイプがあります。

 「必要保障額」と提案される保険種類の罠

①から⑤までのステップを踏むと、保障のことをとても真剣に考え、ムダ・ムラ・ムリなく合理的に考え準備したように思えます。

 

ここからは少し進化したムダを省くポイントです。 

 

例えば、仮に遺族の生活費の不足額が毎年100万円、奥様の平均余命がこれから50年だと仮定するとだと仮定すると5000万円の定期保険・終身保険が必要だとする提案をしてきます。(A)

 

 一歩進んだ提案を学んだセールスマンは、今年は5000万円、来年は4900万円、再来年は4800万円と逓減する保険や、毎年100万円を受け取れる保険(家族収入タイプ)を提案してくるでしょう。(B)

 

 さらに合理的にすべく、死亡確率と生存確率から考えて長生きリスクへの備えも同時に解消しましょうと、5000万円の終身保険を提案してくるケースもあります。(C)

 

ここで、それぞれの提案を、本当に合理的かつお客様の生活支援のための提案になっているかどうかを検証してみると…

 

Aは年数が過ぎていく過程で保障額がムダになり、

Bは保険料が削減できますが、保険金を毎年受け取ることは相続ではなく雑所得扱いとなるために毎年の遺族の所得にプラスされてしまいます。

 

Cは生存時、終身保険の解約返戻金で老後生活資金をカバーするということが、財産の取り崩しであることや返戻率の悪さから、生活費の不安は払しょくされないこと。さらに、万が一死亡保険金を受け取った場合は、当然、解約返戻金相当部分は受け取れないので、財産と保険は区別したほうが合理的なのです。

「真に合理的な必要保障額」の考え方

更に発展したムダの省き方は、「不足額すべてを保険で補う必要がない」ということなのです。

 

先ほどの例で、毎年不足する100万円を「インカム・ゲイン」(利子・配当・不動産・事業)で準備してみましょう。

 

年間分配利回りを10%で設定すると、必要一時金(保障額)は1000万円

年間分配利回りを5%で設定すると、必要保障額は2000万円

年間分配利回りを2.5%で設定しても、必要保障額は4000万円となります。

つまり、2.5%程度の分配利回りでも、ABCの各提案よりも必要保障額が削減できるのです。

「見直し」という名の新規募集の体質

ひとことに「保険の見直しと言っても、減額・払済・増額・延長定期・一部解約・解約・特約中途付加・特約解約・払方変更・転換契約・新規加入・・・様々な方法があります。

 

ところが、世間一般的に見直しといえば常に新規加入の勧めが常識になっています。明らかに「新規募集手数料の上に成り立っている業界」なのです。

販売に必死にならざるを得ない体制こそが、日本で金銭教育も金融教育も進まない何よりの原因だと思います。

 

このままでは、いつまで経っても国民は、保険のかけ方すら知らないまま、それが次の世代へと負の遺産として引き継がれていくことでしょう。

 

 

保険の見直しは、新規の保険に加入することではない。

リスクのすべてを保険で賄うことは、ムダ・ムラ・ムリを生じる原因になる。

 

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