「財産形成」と「資産活用 」
古く、中国では「貝」を通貨として使っていたことがあり、お金を表す漢字には資産にも財産にも「貝」が組み込まれています。
文字通り解釈してみると、「才覚を含め有形・無形の価値を有するものを財産」、「次のお金を産みだすものが資産」となります。
法律用語辞典によると、財産とは広く有形・無形の金銭的価値を有するものの総体をいう。例えば、財産権、私有財産等。また、特定の主体を中心に、又は特定の目的の下に結合している財産権の総体の意味に用いられる。各個別の規定は、積極財産(資産)だけを指す場合と、消極財産(負債)をも含む場合とがある。また、資産とは一般的には財産。会計学上は、企業によって所有され、将来において収益をもたらし得る財産。[有斐閣 法律用語辞典 第4版]とあります。
このように、漢字からも法律辞典からも読み取れるように、お金や知識や技術などの「財産」を一生懸命に育むだけでなく、その後は「資産」として所得を産み出すように有効活用することで、ちょうどいいお金持ちの条件の不労所得が手に入るということです。
インカム・ゲインとキャピタル・ゲイン
日本では、「資産運用=値上がりを期待するもの」という認識が多く、そのため、多くの人が「怖い」という印象から資産運用との距離を置いています。
英語では、育てる運用(価値の増大)から得られる所得のことを「キャピタル・ゲイン」、資産が稼ぐ所得(定期的収入)のことを「インカム・ゲイン」と呼び、同じ資産運用でも「育てる(価値の増大)・稼ぐ(定期的収入)」という目的別に分類されています。
実は日本でも、キャピタル・ゲインは「譲渡所得」、インカム・ゲインは「利子・配当・不動産所得など」という分類はできているのですが、所得税の勉強はしている人はいても、7つの金融所得をバランスよく作る方法を伝授できるプロがいないため、税金の計算のための分類と認識されています。
「元金を取り崩す運用成果」と「元金据え置きの運用成果」
「財産形成 = 儲け(育てる) = 現在評価 × 数量 − 元金」
「資産活用 = 稼ぎ(貸出す) = 数量 × 利子・配当・家賃など × 受取回数」
となるので、育てる運用の場合、結果にはプラスとマイナスが混在し、
そのため「怖い」というイメージがあるのです。
一方、稼ぐ運用(資産の有効活用)は、元手を崩すことなく、レンタルの仕組みを活用してその対価を得るため、利子・配当・不動産所得のように、ゼロ以上のプラスしか産まない運用となります。
しかし、利子・配当・不動産所得を生み出す「債券・株式・不動産」を「売買」することで得られる、名義を譲渡する所得=譲渡所得のほうに、販売する会社も懸命になり(販売手数料が得られるため)いつしか、「運用は怖いもの」となってしまったのです。
子供を育て、社会の一員として貢献の対価を得る(稼ぎ)ように、資産運用も、育てることと稼ぐことの両方を見てほしいのですが、まともな「金銭教育」がないまま現在を迎える日本にとって、「多くの人が世の中で言っていること(主流)」が正しく、少数であっても本当のことを言っていること(本流)がどうしても怪しいと思ってしまうのでしょう。
資産運用には二種類ある。
価値の増大を計る儲け(キャピタル・ゲイン)と 定期的収入を計る稼ぎ(インカム・ゲイン)。
「定期的収入」と「価値の増大」
資産運用をギャンブルの延長線上にあるものだと考えている方は少なくないと思います。
日本では、資産運用は値上がりを得るものだと考えられているため、損失や利益が発生することでギャンブルに近いものだと考えられているようです。
本来資産運用には、「定期的収入を確保するインカム・ゲイン」と「価値の増大を計るキャピタル・ゲイン」が存在することを多くの資産運用関係の専門家が伝えていないことが「運用=ギャンブル」という考え方を増幅させています。
インカム・ゲインに関してはいずれご紹介するとして、ここではギャンブルとトレードとインベストについてお話します。
「4種類」の投資家
①ギャンブラーの目的は情報をもとにして鉄火場で当てること。逆に、外れることがある。
②トレーダーの目的は知識をもとにして相場で勝つこと。逆に負けることがある。
③インベスターの目的は原理原則をもとにして市場で企業の成長を応援すること。前者とは違い、かなりの時間がかかる。
このように株式市場では、価値の増大(キャピタル・ゲイン)を計るプレイヤーが3種類と、株式配当という定期的収入(インカム・ゲイン)を計るプレイヤーの、合わせて4種類のプレイヤーが混在します。
もちろん、ギャンブルやトレードで当て続けたり勝ち続けたりすることは至難の業です。これらは投機と呼ばれるものです。
一方、育てる運用(キャピタル・ゲイン)と稼ぐ運用(インカム・ゲイン)を投資と呼びます。
株式会社から見れば、世の中から長期の資金調達(資本金)するための手段として株券を発行しているのに、毎日売買されていては、長期の資金準備どころか、日銭に右往左往させられてしまいます。
正しい基準で投資することが浸透していない
ギャンブラーもトレーダーもインベスターも、「安く仕入れて高く売る」という大原則は同じであるにも関わらず、日経平均株価やTOPIXなどの指標を、毎日の新聞やニュースで報道しているため、投資の基本を身に付けていない方が「その指標そのものが基準」であるように錯覚していることがとても危険に思えます。
なぜならば、仮に株式売買を商売として捉えるならば、自身が購入している銘柄の「平均買い付け単価(平均仕入)」を見て、それより安ければ購入の機会、高ければ売却の機会という判断が基準であるからです。
株式は、投機にも投資にもなり得る。
自分の保有している平均買付単価(平均仕入価格)の管理が何より大事。