自動車は所有から「共有の時代」
自動車は、一家に一台の時代から、一人に一台の時代を経て、現在ではレンタカーやカーシェアリングで充分だという家庭も増えてきました。
まずは所有することとその維持費を、自動車取得費用を総額240万円(ローン金利含む)、その車に10年間乗り続けたと仮定して概算を出してみましょう。
取得するだけで年間24万円の平均コストが必要です。月の負担に直すと2万円となります。さらに、駐車場代を月額5000円、ガソリン代を5000円、自動車保険5000円、税金に3500円。車検代を月平均にすると4000円。総額で月々42500円となりかなり大きなランニングコストとなります。
車に乗るのが月に5回程度なら、1回の乗車のために、42500円÷5回で、8500円を支払っていると考えることができます。
たまにしか乗らない方なら、カーシェアリングやレンタカーのほうがお得と考えるようになってきたのです。
「人に危害を加える可能性がある運転免許」というライセンス
もちろん車には、
①移動の手段としてだけでなく、
②荷物を運んだり、
③家族や恋人、友人たちとレジャーに出かけたり、
④高級車を所有していることのステータスなどの機能があります。
ただし、その便利な車という道具は、意図していない事故やトラブルに巻き込まれ、最悪のケースとして人の命を奪ってしまう可能性のある道具であることを忘れてはなりません。
お金持ちは運転しない。つまり、違反や事故とは無縁の「安全第一主義」なのです。
先ほどの「月々のランニングコスト42500円分」をタクシーで移動したほうが安全で楽だという考えもできると思います。
ムダの多い「自動車保険」
自動車保険は㋑賠償保険 ㋺傷害保険 ㋩車両保険 ㊁その他特約という構成で作られています。
㋑賠償保険 多くの方は対人賠償・対物賠償は無制限という基本をご理解されていますが、時折、バイクだから無制限でなくてよいという恐ろしい考えの方にも遭遇いたします。
「バイクだから、コンビニエンスストアには絶対に突っ込まない!」とは言い切れません。そのお店の営業損害を含め賠償ができない場合、手持ちの財産を手放すだけでなく、その後の人生をあきらめることにもなりかねませんから、他人への賠償は無制限を選択されることをお勧めします。
㋺傷害保険 傷害保険はあまりにも種類が多すぎて、皆さまも考えることが面倒くさいのではないでしょうか?特に古くからある、搭乗者傷害保険(生保と損保の垣根の名残りから上限1000万円まで)は人身傷害保険(もともと交通傷害保険)の登場で統一してもよいのではないかと思います。
更に人身傷害保険を、搭乗中のみでなく、歩行中も保障することで、通勤通学の傷害保険として活用できるのですが、学校では「さも加入義務があるかのごとく」交通傷害保険を勧めています。
これらすべて、重複したムダな保険となっています。
相手が任意保険に加入していない場合の無保険車傷害や、自損事故の際の傷害保険など、ケースバイケースで使える保険が違うということはあくまでも損害保険業界が商品開発をしてきた歴史であって、今自動車に乗って保険を準備したい人にとっては「わかりにくい、ややこしい、面倒くさい仕組み」となっています。
結局、自動車保険に付帯する傷害保険を上手に活用するコツは「その車にだれが乗るのか」を明らかにすることです。
例えば、会社の業務用車両に搭乗者傷害保険と人身傷害保険が付いていて、更に従業員は労災害保険の対象で、その上会社が労災の上乗せの傷害保険に加入しており、家庭でも家族傷害保険に加入しているということは本当によくあるケースです。
その車には、従業員の方が乗られるのですからなんとも保険まみれの状態です。
再三お伝えしていますが、保険は使えないケースが弱点です。できる限り守備範囲の広い保険で、シンプルに備えることが賢明な選択と言えますので、例題では労災とその上乗せの傷害保険があれば、自動車保険の搭乗者保険や人身傷害保険は加入しないという選択もあります。
個人の車両の場合は、無保険車傷害と自損事故傷害は強制加入となっている保険会社が多いので、選択ポイントは、ケガの治療費だけでなく休業損害まで補償対象となっている人身傷害保険を優先加入とし、搭乗者傷害保険は余裕があったら加入することです。
㋩車両保険 車両保険については、その車両への愛着度合いもポイントだといえます。
日本人は「車の傷」を嫌がる方が多く、特に新車のうちは保険で修理をしたいという方が多いのではないでしょうか?
車両保険の守備範囲の広いパターンが「一般車両保険」で、当て逃げやイタズラ、自損事故までもがその補償範囲となっています。
一方、車両が少し古くなって、傷などを気にしなくなってきたら「車対車限定+αや、エコノミー」という車同士の事故を中心に、相手が特定できる当て逃げや火災・洪水・台風などを加味した少し狭い範囲の補償を選択することも保険料を抑えるコツです。
更に、保険料を抑えるポイントは、車両保険の免責金額の活用です。
保険は即時に大金を準備できる人類の英知の結晶とも言えますが、少額は保険で賄わないことで保険料が抑えられます。10万円以内の傷なら保険を使わない、保険を使っても、10万円までの金額を自己負担するいうものです。
㊁各種特約 保険会社によって、各種特約は異なります。
なかでもご活用いただきたいのは、弁護士費用特約です。
これは、自分に過失がない場合でも、この特約を付けていれば弁護士が代わりに交渉にあたってくれるというものです。
ほかにもロードサービスなどは、JAFなどと比較検討したうえで検討していただくと、効果的な自動車保険の加入ができます。
最後に、毎年更新できる保険です。面倒くさがらずに毎年中身を吟味していただくことが大切です。
自動車保険は組み合わせの保険。二重にも三重にも重複しがちな傷害保険に要注意。
できるだけシンプルに。相手への賠償は無制限に。