「借金は悪である」という常識
特に日本人は、借金に対して異常なまでに過敏です。その割に、リボ払いを多用しているという滑稽な風潮を、私はどこか冷めた目で見てしまっています。
資本主義は知恵やアイディアがある者がお金のある者から資金調達して成功する経済であり、お金がある者が知恵やアイディアがある者に投資してそのご利益にあやかる経済です。
重要なのは、借金と資金調達の違いです。
目的に対して「覚えた手段」を講じる世の中
世間一般的に、①自動車の購入資金 ②学費 ③老後資金 ④相続税への備えなどを準備しようとすると、①定期預金 ②学資保険 ③個人年金やiDeCoなど ④終身保険などを活用される方が多く、専門家も「そのように勉強して資格を取得」しています。
それが当たり前だと覚え、人に伝えているからです。
しかし、前述のように、資本主義は「資金調達して稼ぎを得られる経済」なのですから、「考える」ことによって、もっと効果的な自動車の購入~相続税への準備ができるはずです。
覚えた常識では、「効果的な対策」は打てない
以前、お子様の大学進学費用の相談に、二組のご夫婦がほぼ同時期にお見えになりました。
一組目は、お金のことは多少わかる。自分でも勉強し準備もしてきたという方で、預貯金や学資保険を合わせると2000万円を超え、県外の大学に学費も仕送りも出きる状態にありましたが、老後を見据え、その資金を使った場合の不安をお持ちのようでした。
「これからどれくらいお金がかかるか一緒に考えてほしい」と言われましたので、効率的な学費の準備をお考えなら、「いくらかかるか」だけではなく、資産・負債・収入・支出の4つの視点から学費を検討しましょうとお答えしましたが、マネー雑誌やTVではそのようなアドバイスは見たことがないと相談をされずに帰られました。
一方、もう一組のご夫婦は、子供が進学したいと言っているが、手元の資金も少なく(500万円)、どうしていいかわからないという状態でした。
同じようにお答えしたところ、「子供が進学できるのなら」と相談を開始することになりました。
「資金調達」と「資産運用」(貸借対照表)
最初に結論から言うと、何度も相談を重ね、お子様の学費は全額「日本学生支援機構の第二種奨学金」を活用し、ご夫婦が懸命に貯めた500万円は学費には使わずインカム・ゲインの運用にしました。
いうなれば、資金調達と資産運用という「収入でも支出でもない、貸借対照表を活用したお金の貸し借り(=金融)を検討していただいたのです。
それに対し一組目の相談者は、ご自身の収入が高いため、支出が可能かどうかという「損益計算書」の発想で、私の「金融のプロ」としての話には耳を傾けず、「貯めたお金を使う・収入から支出を補う」という選択をされたのです。
奨学金の返済方法
二組目のご相談では、奨学金を月々12万円、在学中の4年間で総額576万円を活用させていただきました。
在学中は無利息ですが、4年後に無事卒業されると、返済期間は最長20年間で上限金利3%の返済が始まります。
通常は、奨学金を利用した本人や連帯保証人の親御さんが「財布から」返済をされるので、「なるべく早く返そう」とか、最悪の場合返済不能になり、日本学生支援機構側からすると不良債権にもなりかねません。
ここからが資金調達と資産運用という貸借対照表を活用した「金融の知恵」なのですが、
①資金調達:奨学金の返済は元利合計を分割払いするため、上限金利3%ならば、年間負担利息は概算の単純計算で1.5%程度(初月の返済は576万円の3%、毎月元金が減っていき、最終月は数万円の3%という具合に元金が三角形なので利息は表面金利の二分の一となります。
(三角形の面積を求める方程式)
②資産運用:借入元金とほぼ同額の500万円をお持ちでしたので、元金100%を10年で返済するとすれば、年間10%の元金+金利。20年間の返済であれば5%の元金+金利1.5%=6.5%のインカム・ゲインで返済が可能となります。
配当型の投資信託で7%以上の表面金利があれば十分に返済できるのです。
③インカム・ゲインで返済:しかも、収入や財産の取り崩しから学費を捻出している方とは違い、このご夫婦は、子供の財布からも、親御さんの財布からも学費の支払いをせず、(貸借対照表の資産を保有しながら、配当所得で奨学金を返済する)20年後には返済用のインカム・ゲインが、所得の上乗せとなって、老後資金の足しにもなるし、お子様名義であれば、20年後の昇給のようなものにもなります。
一般的な常識で、「20年も返さなければいけない」というのは、「財布から支出を捻出する」という思い込みで、逆に「資金調達を20年も返済期間がある」と考えることができることがちょうどいいお金持ちになる要素です。
これは住宅ローンにも同じことが言えますので、低金利時代に住宅ローンを繰り上げ返済したり、頭金をより多く入れたりするアドバイスとは全く正反対の、「世間一般的には非常識とも言えるアドバイス」かもしれません。私は大好きですが。
借りたお金を使い切ると借金。
資金調達に変身させるには、定期的収入が得られる資産運用を行うこと。