住まいの「目的と在り方」の変化
「夢のマイホーム」なんて言葉が大流行した時代もありました。
住宅は、「雨風をしのぐ」だけではなく、「家族の憩いの場所」であったり「くつろぎのマイホーム」であったりします。
その空間へのこだわりの時代を経て、今では様々な災害に強い家づくりも盛んに行われています。
しかし、家族の在り方も随分変わり、子供たちは学生時代から故郷を離れ、日本全国どころか、世界にまで羽ばたいていく時代になりました。35年ものローンを組んで土地を購入してまで建てた住宅に、子供たちは帰ってこないという状況が急激に増えてきたのです。
また、大人たちは未だに全国転勤型の勤務先が多く、住宅を取得しようものならご主人は単身赴任を選択し、家族がバラバラで生活するという「家を手に入れること」だけが目的になって、「家族の憩いやくつろぎ」とは程遠い生活を余儀なくされることになりました。
他にも様々な理由により、家を持つことに興味を示さない社会人が急速に増えています。
住宅に関しても所有せずにシェア(賃貸住宅)するという考えが広まり始めている時代なのかもしれません。
家を買っても「後悔しない人」
「家は買ったほうが得ですか?」と何十年もの間、訊かれ続けました。損か得かを計算する前に、本当に欲しいのかどうかが大切な決断の要素です。
もちろん、払えるか払えないかで家を買うことには猛反対してきました。
家を建てたりマンションを購入したりする決断のための条件を書き出せば、比較的悩むことなく決めることができます。
①引っ越しを伴う転勤がない
②土地を所有している(戸建ての場合)
③会社に社宅や住宅手当などがない
④家業を営んでいて店舗付き住宅も可能
⑤ずっとその地域に住み続けたい
戸建て・マンション・賃貸住宅の「比較」
戸建ては、支払いが固定化できますが、修繕費や改修費など、家を取得する以外に管理する費用も自分で準備する必要があります。
マンションは、修繕費を管理組合などで積立てて建物の管理を行いますが、駐車場利用料や共益費など負担金が徐々に上昇するケースが多くローン完済後も継続的に負担は残ります。
また、戸建てやマンションを「資産」だと言って販売されていますが、自分がそこに住めば、単なる耐久消費財であり、売却するころには価値は下落しておりローン負担が残ります。
また、人に貸そうと思っても、空き室の月数だけローン負担が家計を圧迫します。
賃貸住宅は、物価上昇に伴って家賃が高騰していくことと、なにより高齢になると新規契約できないケースもあります。
しかし、転勤や引っ越しに有利であることや、常に新しい物件に住むことができるメリットもあります。
さらに、今後の日本の少子高齢社会を鑑みると、賃貸住宅の供給過多により、賃料の低価格競争も起こるかもしれません。
現に、過疎化が進む地域では、、激安もしくは無料でもいいから住んでほしいと言う物件すら出現しています。
住まいの無人化による老朽化を恐れたり、住まいを継ぐ者がいなかったりするために起こっている現象です。
住宅を「購入しない理由」
住宅を購入しない選択をされた方々の代表的な意見をまとめると次のようになります。
①人気のない、環境が悪い物件の資産価値は下がり続ける
②ローン返済が終わっても維持費がかかり続ける
③会社からの住宅手当が出なくなる
④失業などによる住宅ローンの返済が不安
⑤変動金利で借りると、住宅ローン金利変動の不安
⑥災害に弱い(特に地震)
⑦欠陥住宅・設備不良の可能性もある
⑧引っ越しや転勤のハードルが上がる
⑨家族構成の変化に対応できない
⑩親から住宅を相続できる可能性がある
⑪高齢になっても住む場所には困らない
など。当然ですが、個々の状況によって多種多様に住まいの考え方があります。
住まいを取り巻く「災害リスク」
「地震・雷・火事・親父」江戸時代から、災難を怖い順に並べて恐れ、用心していたことわざですが、親父に関しては、そのまま親父であるという説と、台風を「大山嵐」(おおやまじ)や「大風」(おおやじ)という漢字と読み方で表していたという説があります。
いずれにせよ、地震・雷・火事・台風などの災害に備えることも住宅を取得した者の責務となります。
なかでも、地震は特に要注意です。そもそも、地震保険は、損害保険会社が採算のとれない保険として国が主導して地震から国民生活の肝である住宅を守るために作られました。
しかしながら、現在の地震保険は住宅評価の50%までしか補償されず、住宅ローンを補填することが不可能となっているのです。
特に、マンションの場合、自分だけの敷地である専有部分と、住民が共同で管理している共有部分とに分かれているため、たとえ3000万円の住宅ローンが残っていたとしても、専有部分(ここでは1500万円と仮定)の50%である750万円しか補償されないということなのです。
3種類の住宅総合保険
住宅総合保険(世間では火災保険と呼ぶ方が多いようですが、火災以外の災害にも対応しているので正式に覚えたほうがよいでしょう)では建物の評価方法として、簿価・時価・新価の三種類の加入方法があります。
例えば、住宅を新築した場合、住宅の評価額や住宅ローン相当の補償金額を準備されると思いますが、35年間の間に住宅の新築コストも上昇していくものと思われます。
そのため、「同じような物件を建てるとしたら今ならこの金額になる」という上昇した価格を支払う契約を新価と言います。
ローンも完済し、子供たちも成人し、もしも災害が起こって住宅が倒壊しても、今度は少し安く立て直すという場合には、契約時の評価額をそのまま維持する簿価という契約も検討したほうがいいと思います。新価に比べ、保険料は安くなります。
更に、自分の代で修繕だけ出来ればいい、倒壊した場合、子供の家に同居する、建物は取り壊して更地にすればいいなど、建物を補償する必要があまりない場合などは、ローン残高に見合うように、その評価が年々減少していく時価による契約も検討の余地があります。
「一部保険」に注意
建物の評価が2000万円であるにも関わらず、保険料を負担するのが嫌で1000万円しか掛けなかったなど、本来の評価額よりも著しく不足している保険の場合を「一部保険」と言い、保険会社によっては一部保険の契約の場合支払を行わないということもありますのでご注意ください。
住宅総合保険の「補償内容」
ほとんどの住宅総合保険は「火災・落雷・破裂・爆発・風・ひょう・雪」などの基本契約に、「水濡れ・盗難・水災・破損や汚損」という立地条件などを加味して選択する特約。
そこにプラスして、地震保険や家財保険などの加入の検討となります。
高台のマンションの高層階で、水災の特約を外すというケースは考えやすい例だと思います。
特に注意すべき点は、地震発生による火災被害は、地震保険の加入がないと支払われないなどという、やはり、「支払われないケース」の確認が重要です。
保険は難しいもの。
だからこそ「おまかせ」にせず、根気よく、説得されずに納得いくまで
ポイントをクリアにしていく。